木暮亜矢の冒険 終章

 ああ〜、元の世界はいいわぁ。
 確かに勉強やら試験やら色々あるし、私はやっぱり色んな事件に巻き込まれてる。
 だけど……今までの暮らしになにか変化があるわけじゃない。
 これでよかったのだ。うん……。
「ナギル、元気にしてるかなぁ」
 横からそんな声が聞こえてぎょっとすると、由希がにやにやしながらこちらを見ていた。
「以上、亜矢姉の心の声でした!」
「ちょっとあんた!」
「いってきまーす」
 するりと私の攻撃を避けて、由希はさっさとリビングを抜けて玄関から外に出て行ってしまう。
 二階では相変わらずお姉ちゃんが眠ってる。
 私もそろそろ学校に行かないと。
 テレビの電源を消そうと、テレビに近づくと。
 にゅ、と何か腕が画面から突き出した。そして私の足を掴む。
「っっっ、ぎゃあああああああああああああああああああああ!」
 テレビから出てきたのはナギルだ。続いてインコことモンテさん。
「いやいや、大変な目に遭いましたな、王子」
「すまないアヤ、しばしこちらに避難させて欲しい」
「ていうかあんた! この変な紋章消してよね!」
 お風呂に入ってから気づいたけど、あの変な紋章、消えてなかったんだから!
「やっほー! ちょ〜っとやばい展開になっちゃって、かわいこちゃんおひさしぶり」
「ミラがまたこっちと繋げたのね!」
 ああもう! やっぱりなにか事件にぶち当たる! 私の不運? はまた始まったみたいだ。
 でもナギルを久々に見上げて、なんだかどきどきしてしまう。背が少し伸びた? 顔つきがちょっと変わった?
 彼は決意したようにこちらを見てくると、ひざまずいて私の手をとった。
「愛を誓う。宣誓を今、ここに」
「はあ?」
 そう思った時にはナギルが立ち上がって、額にキスをし、それから私の唇を奪っていた。
「………………」
 硬直。
 硬直。
「っぷはー! ぎゃあああ、なにすんのよ! ファーストキッスがあああああ!」
 私は拳を振り上げる。
「とにかく事情を説明して!」

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